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民主主義の歩み(3)現代における民主主義

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お久しぶりです。今回は『民主主義とは何か』(著者 宇野重規)の3回目ということで現代における民主主義ということで書いていきます。

 

 20世紀に入るとほとんどの民主主義国家の間で普通選挙が実現し、当時の覇権国として台頭しつつあったアメリカは世界大戦の参戦にあたって民主主義の擁護を掲げました。結果として20世紀は民主主義の世紀となったのです。それを象徴するのが君主制国家の減少です。19世紀の時点では150ほどの君主制国家がありました。それが二つの世界大戦を経て30にまで減少したのです。ドイツ帝国ロシア帝国オスマン帝国オーストリアハンガリー帝国そして清などの大国が相次いで崩壊しました。そして現在まで残っている君主制国家もほとんどが民主制と両立しています。

 

 ウェーバー第一次世界大戦においてドイツの敗戦が近い1917年に『新秩序ドイツの議会と政府』という論文を執筆しています。ウェイバーはそこでビスマルクが政治的に残したものについて指摘しています。ビスマルクは政治や外交に関して類いまれな才能を発揮して19世紀のドイツを発展させていきました。しかし彼は、自分の政敵など都合の悪い組織や人物の存在を許しませんでした。その結果として議会や国民は彼に全ての判断を委ねていきました。彼が失脚した後に残ったのは政治的な判断力を持たない国民と政治的な力を失った議会でした。それらに変わって第一次世界大戦後のドイツ政治を支配したのは官僚たちでした。ウェイバーは近代的な国家の運営のためには官僚と政治家の仕事は異なるべきであると考えていました。官僚は専門的な能力に基づき政治思想に関係なく仕事をこなすことが必要です。一方で政治家は議会での討論を通じて、他の議員や政党と国家運営についての方針を決めるのが仕事です。そして彼は議会の仕事に国、行政に対する監視能力を見出しました。ところが当時のドイツにおいては政治家や議会がそれらの能力を持っていなかったことが問題だと言えます。これに対抗するために彼は大統領に大きな権限を与えて政治のバランスを取ることを期待したのです。

 

 選挙権の拡大によって国民の政治参加が広がっていくについれて、政治に関わる人は増えていきます。それによって政党の官僚化が進み、民衆の意見が反映されにくくなっていきました。選挙権拡大によって民主化が進められていったものの、それとは裏腹に国民の意思が政治に反映されにくいような形になっていってしまいました。選挙で勝利する為には全国的に影響力を持つ政党が不可欠になってきます。その為には多額の資金も必要になりますし、雑務や常務などの仕事も増えていきます。国民による政治参加が増えていくにつれて政党も官僚化せざるを得なかったのです。

 

  第二次世界大戦以降、西側の先進諸国は高度経済成長を経験し、福祉制度を充実させていくなどして福祉国家への道を進めていき、先進国の国民の平等化は進んでいきました。その要因として相続税累進課税の導入、そして高度経済成長などが挙げられます。この状況が資本家や富裕層と労働者層との安定が図られ、戦後民主主義の安定期を迎えることとなりました。

その後2度に渡ってオイルショックを経験し、経済成長の鈍化や財政赤字に苦しむ先進国は新しい経済や政治の形を模索していくことになったのです。かつて『ゆりかごから墓場まで』というキャッチコピーで手厚い社会保障制度が実現していたイギリスでは経済の規制緩和と民営化を掲げるマーガレット・サッチャーが当選します。アメリカでも規制撤廃による自由競争の促進と、大幅な減税による経済回復を掲げたロナルドレーガンが当選しました。一方中国でも改革、解放政策が本格化し市場経済の導入が進るなど、世界的な市場経済とグローバル経済が発展していきました。この様な状況になると再び格差が広がっていきます。世界的に中間層が没落していくことになっていき、民主主義は不安定化していくことになったのです。